AMH
(抗ミューラー管ホルモン)
AMHとは、抗ミューラー管ホルモンの略で、これから発育していく卵胞(前胞状卵胞と小胞状卵胞)の顆粒膜細胞から分泌されるホルモンです。原始卵胞から一次卵胞への発育および成熟卵胞の発育に影響していると言われ、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているか(卵巣の予備能力)を調べていく検査として、注目されています。
なお、AMHの数値が表すのは、あくまでも「生涯の残りの卵子の在庫数」であって、その卵の質や発育については測定できません。また、卵子の老化は実年齢に比例するため、同じAMH値であっても、年齢が高くなるほど反応は悪くなります。
「AMHが低い=妊娠率が低い」とは 限りません
「AMH値が低い=妊娠率が低い」と誤解されがちですが、そうとは限りません。AMH値が「0」でも妊娠・出産された方の報告も挙げられています。
AMHで測定できるのは、「卵子が残っているかどうか」であって、妊娠において重要な「受精するまで利用できる卵子があるかどうか」ではありません。
ただ、AMHで測定できる「卵子が残っているか」において、卵の数が少ないという場合は将来的に不妊治療をできる期間が限られていることを意味しています。ご自身が妊娠できるタイムリミットを把握するためにも、一度AMH検査を受けてみることを推奨いたします。
AMHの基準値
AMH値は年齢と相関していません。20代~30代の若い方でも、AMH値には高低があり、ばらつきが見られます。検査を受けると正常値が気になるかと思いますが、AMH値では「基準値(正常値)」が設定されていません。
しかし、一般的にAMH値においては、年齢とともに減少する傾向にあります。個人差も大きく、正常値を示すものはありませんが、一般的な同年齢と比較して大きく離れているか見ることは一つの指標になるかもしれません。
AMH測定時期と測定誤差
AMHは他のホルモン検査と異なり、月経周期に関係なく、いつでも計測できる血液検査です。卵胞は、原始卵胞から一次卵胞になり、次に二次卵胞へ、そして胞状卵胞へと、常に一定の割合で成長しています。AMHは小・前胞状卵胞から分泌され、9~10mmぐらいまで卵胞が大きくなると分泌されなくなります。
ホルモン検査では多少の誤差が生じますが、AMHはその誤差が比較的大きい検査です。例えば「0.85」や「0.9」が出た場合でも、「1」と同等だとみなします。何度か検査を受けたとき、数値に多少の変動が見られるかもしれませんが、特に気に留めなくて大丈夫です。
基準値よりも高いと要注意
AMH値に基準値がないこと、年齢とともに減少してくる傾向にあることを述べましたが、年齢が若く、かつAMH値が高い場合でも「結果が良かった」と断定できません。
むしろAMH値が4.0~5.0ng/ml以上あった場合は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。PCOSを発症すると排卵が阻害されて、卵巣内に多数の卵胞が溜まるため、月経異常や不妊症を引き起こしてしまいます。
また、体外受精などで行う排卵誘発に過剰に反応して、多数の卵胞が発育し卵巣が腫れる状態である、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になりやすいため、排卵誘発を行う場合は要注意です。
AMHのまとめ
卵巣では、「生まれる前に作られた卵子」が貯蔵されているだけで、新しい卵子が作られ続けるわけではありません。そのため、体内の卵子はどんどん消滅していきながら、加齢とともに卵子も老化します。卵子が減少する数は個人差が大きく、中には「産みたい」と思ったタイミングに卵子がない方もいらっしゃいます。AMH値を調べておくことで、妊娠と不妊治療のタイムリミットが前
もって把握することができます。「まだ若いから」ではなく、「私のAMHは〇個あるから、そろそろ妊活を考えてみよう」というように、ぜひご自身の人生設計の参考として利用してみてください。