タイミング法

タイミング法とは

最も妊娠しやすいタイミングを予想して、その周辺の時期に性交渉を行う方法を「タイミング法」と呼びます。性交渉するタイミングは、超音波検査や血中ホルモン値など、を参考にしながら、排卵日の予測を行うことで決まります。肉体的負担が少ない不妊治療です。年齢面と一般的な不妊症検査の結果から、自発的な排卵があり、かつ精液検査の結果も問題がないと判断されましたら、まずはタイミング法から始めてみましょう。
しかし実際には、排卵予測日が自分が今まで考えていたタイミングとは異なる場合もあります。特に、月経不順の方の場合には、自力で排卵日を予測するのはなかなか困難です。お二人でタイミング法を行っても上手くいかない時は、そのまま自己流を継続で行わず、ぜひ当院を受診し医師のアドバイスを受けてみるのはいかがでしょうか。
自然周期(排卵誘発剤を使用しない方法)でのタイミング法では排卵日予測がスムーズにできない場合があります。このような場合には、排卵誘発剤を併用使用して複数個の卵子胞を同時に発育させて排卵させることで、受精の確率を高める方法も検討できます。しかし、こうした排卵誘発剤を用いても治療効果が期待できない場合は、体外受精など他の治療法へのステップアップを検討した方良いかもしれません。タイミング法は、あくまで不妊治療の中で最も簡単で、最初に行われるの治療法としてご検討ください。

タイミング法の流れ

排卵日を想定
(月経周期や過去の排卵の様子を参考)

基礎体温における、低温期~上昇期の数日を「排卵日」と推定します。黄体の寿命は約14日なので、月経周期が28日の方の場合、排卵日はだいたい月経周期の14日目になります。

排卵日をより正確に判断
(超音波検査で卵胞の発育をチェック)

排卵時期が近づいてきたら来院していただき、経腟超音波検査で卵胞の大きさを測定し卵胞の発育を確認します。
自然周期の場合では、経腟超音波検査で計測される卵胞径が12mm程度になってから1日あたり約2mmのペースで発育し、卵胞径が18~22mm程度になると排卵されると予想します。
タイミング法では、あと何日で排卵するかを予測しながらサポートします。
なお、排卵期には頸管粘液の性状も変化します。排卵時期以外は、子宮内に細菌などが侵入するのを防ぐために子宮の入り口をブロックする役割をもつ頸管粘液ですが、逆に排卵が近づくと精子を受け入れやすくするために透明でよく伸びる性状に変わります。

排卵日を予測
(総合的に判断)

血中ホルモン値の検査結果や超音波検査の所見を総合的に判断してから、排卵日を予測していきます。血中黄体形成ホルモン(LH)は、一般的に排卵する時期の16時間前に分泌のピークがやって来るため、排卵予測では欠かせない検査情報です。

性行為のタイミング
(排卵予定日に合わせる)

妊娠までに比較的時間的余裕のある患者様で、両側の卵管閉塞や重度の乏精子症・精子無力症を認めない場合に、タイミング療法は検討されます。

妊娠の成立

妊娠4週に尿中または血中のβ-hCG値で妊娠判定を行います。その後妊娠5週に、子宮内に胎嚢(GS)が確認できた状態を「臨床的妊娠」と呼びます。妊娠6〜7週に心拍が確認できます。その後は8~9週頃を目安に、妊娠経過が順調であれば当院を卒業、ご希望の産科施設へご紹介いたします。

タイミング法の費用

タイミング法にかかる費用は、通院や検査回数、薬の処方など患者様によって異なるため、一概には言えません。
※保険適用となることもあります。
※排卵日を予測する超音波検査を月に複数回受けたり、排卵を促すための排卵誘発剤を処方したりする場合の中には、保険適用外となる部分が出てくる可能性もあり、さらに費用が発生することがあります。

費用について

タイミング法は不妊治療の
ファーストステップです

当院では患者様に対して、一律に体外受精を推奨することはしておりません。患者様の背景や合併症、体質に応じて治療法を選択致します
タイミング法で妊娠できるかどうかは、患者様それぞれで違います。
女性の年齢にもよりますが、タイミング法を3~6ヶ月間継続しても妊娠に至らなかった場合は、他の不妊治療をおすすめ致します。
タイミング法は排卵日を正確に予測する方法なので、自然妊娠に近いと考えています。そのため、患者様自身の卵子の寿命や妊娠成立までにかかる時間を考慮する必要があり、きめ細かい指導と診察が必要です。
妊娠率を高めるために大事なのは、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な運動といった生活習慣を心がけることです。妊娠しやすい身体を作ることで、総合的に妊娠力アップを目指していきましょう。

対象となる方

自然妊娠が可能である

タイミング法は、体内での自然妊娠が可能な方々が対象です。

不妊症の原因を
特定済みであること

両側の卵管閉塞や重度の乏精子症・精子無力症を認める場合は自然妊娠が難しく、そうした患者様には他の不妊治療を提案します。
卵管に異常がある方の場合は、手術(癒着剥離術や卵管鏡下卵管形成術)を受けていただく場合もあります。また、重度の排卵障害の方には、体外受精などの高度生殖医療による不妊治療をおすすめする場合もあります。
一方、男性側は、精液検査の結果が正常であることがタイミング療法を行う上での絶対条件です。
異常が軽度の場合は、サプリメントや治療薬の服用で改善する方も少なくありません。しかしもし、重度の男性不妊症の疑いがある場合は、顕微授精といった高度生殖医療による不妊治療を受けていただくことになります。

タイミング法の指導

排卵のモニタリング

タイミング法では、月経開始後から経腟超音波によるモニタリングを行います。卵子が卵巣内で十分に成熟してから排卵するのが理想ですが、卵巣機能低下の著しい患者様の自然周期における排卵では、卵子が未熟な状態でも排卵することがあり、排卵日を予測することが難しくなります。
受精能は成熟卵子の方が高いため、排卵障害の有無にかかわらず、排卵誘発剤を用いて成熟卵子が排卵するようサポートしていくことが有効である場合もあります。
患者様の状態に合わせて、クロミフェン、レトロゾールや注射(FSHやhMG)などを選択し、成熟卵子の発育を目指します。

投薬によるコントロール

成熟卵子を確実に排卵させるために、①hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)製剤 または、②点鼻薬(GnRHアゴニスト製剤)を投与します。通常、排卵は脳下垂体前葉から分泌されるLH(黄体化ホルモン)によって誘発されますが、より確実に排卵を起こすために、①はLHと構造が似ている上に、作用時間が長く作用効果が5倍以上あるという特性を利用しています。排卵直前の成熟卵子があるのにLHが分泌されていない場合、hCG製剤を投与すると35~40時間後に排卵するため、排卵日時を正確に合わせることもできます。
一方②については、患者さん自身から出る(内因性)LHの分泌を促すことで、より自然な排卵を促します。排卵直前の成熟卵子があるのにLHが分泌されていない場合に、GnRHアゴニスト製剤の投与を行うと、36時間後に排卵します。

タイミング法の注意点

受精能力の高い成熟卵子を用意した上で、予測あるいは設定した排卵日に性行為を行っていただくのがタイミング法になります。このように日時の調整をし、成熟卵子を用意した上で臨むので比較的高い確率で妊娠までつなげるのですが、良好な卵巣刺激法を行っても必ず妊娠につながると断言はできません。
また、一般的に1ヶ月に1回しかない排卵日に、出張や単身赴任などの予定がある中、お二人で都合を調整することも難しくさせる要因ともされています。
そこで、このようにお二人のご都合がなかなか合わない、排卵日に性行為を行うことが難しい方には、精子を凍結保存することで、人工授精することをおすすめしております。
なお、タイミング法は1か月に1回を目安に、6回程度の挑戦を推奨しております。6回目までに妊娠できない場合にはタイミング法による妊娠が難しくなりますので、タイミング法ではない積極的な不妊治療にステップアップされることをおすすめいたします。

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