精液検査

精液検査とは

精液検査とは初めて精液検査を受けられる男性の患者様にとって、婦人科で精液検査することは非常にハードルが高いものであると思っています。また、通常の婦人科をメインとした不妊治療施設は、男性不妊治療に精通しておらず、精液検査のみ自施設で行い、結果が悪ければ後は体外受精(顕微授精)などで対応・・・といった対症療法しか行っていない場合が少なくありません。結局、男性不妊症への治療アプローチのノウハウを持っていないのです。
こうした点を改善すべく当院の治療では、同ビル内の泌尿器と男性不妊のクリニックと協力し、ご夫婦の治療を行うことも可能です。
検査予約の手順については、当院スタッフからご案内させて頂きます。
男性不妊症の検査において、精液検査は極めて重要です。精液検査を受ける際は、精液を実際に採っていただき、検体として提出していただく必要があります。血液検査のように病院で医師・看護師に採取する方法ではなく、お手数ですがご自宅またはクリニック内にて、マスターベーションで採取していただきます。
精液検査では、精液量と1mlあたりの精子濃度、運動率、正常形態率を調べていきます。精液検査では、2~7日以内の禁欲(射精を行わない)期間を過ごした後に行っていただきます(つまり、射精した翌日に精液検査を行うようなことはしないでください)。

精液検査では何を調べるのか

(SMAS|精子運動解析|ディテクト (ditect.co.jp)を参照ください)

精液の見た目や出血の有無、ゼリー状になっていないか、量などはもちろん、精液の中にいる精子の数や運動性、奇形の有無なども調べていきます。数や運動性を調べる際に、顕微鏡検査や、精子自動分析装置など数多くの機器を使用します。
特に精子の運動性・運動速度などを確認する場合は、自動分析装置を用いる必要があります。
当院では、「目視できない情報を確認できる自動分析装置検査」と「従来の目視で確認を行う顕微鏡検査」を併用して、より正確な精液検査を実施します。

費用

  費用
診察料(初診料) 3,000円
診察料(再診料) 1,000円
精液検査 5,000円
感染症検査(梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV) 5,000円

副作用

  1. 事前の禁欲期間(2日~7日間以内)がないと正しい検査値が出ない
  2. マスターベーション(用手法)による全量採取が必要
  3. 精液を持ち運ぶ場合は、過度な温度変化を避ける(容器を人肌程度に保つ)必要がある

精子の異常に伴う疾患

  • 無精子症(精液中に精子が全くいない状態)
  • 乏精子症(1mlあたりの精子の数が1500万以下の状態)
  • 精子無力症(前進できる精子の数がなかり少ない状態)
  • 奇形精子症(正常形態精子の割合が低い)

など

精子の異常があっても、軽度の場合は自然妊娠できる可能性があります。
なお、精液検査の結果はその日の健康状態やストレス、アルコール摂取、疲れなどによって変わることがよくあります。そのため、1回だけではなく、日を変えて1ヶ月以内に少なくとも2回検査を受けていただく場合もあります。

異常が認められた場合の処置

乏精子症

人工授精または体外受精(状態によっては顕微授精)を選択します。

無精子症

精管閉塞がある場合は精路再建手術を行うか、精巣内精子採取術(TESE)と顕微授精(ICSI)の両方を行う治療法(TESE-ICSI)などを選択します。

勃起障害・射精障害

勃起障害治療薬等で治療したり、人工授精を行ったりします。

当院の精液検査

自動分析装置検査と顕微鏡検査を併用することで、下記データを測定していきます。

  • 精子濃度(1mlあたりに含まれる精子の数)
  • 精子運動率(運動している精子の割合)
  • 高速前進運動精子濃度
  • 低速前進運動精子濃度
  • 精子の平均運動速度(ミクロン/秒)
  • 高速に直進する精子の割合
  • 高速で動かないが、直進する精子の割合
  • 頭部、尾部の動きはあるが、前進していない精子の割合
  • 全く動いていない精子の割合
  • 奇形精子の割合
  • 運動精子濃度
  • 妊娠能力が高い精子の濃度
  • 精子自動性指数
    (SMI:Sperm Motility Index)
  • 精液中の炎症性細胞・細菌の有無
  • 精液の外観・粘度に問題がないか
など

SMI:妊娠の確率を判定する指数で、生殖補助医療などを行うか判断する際に、参考になる情報です。

このように一回の精液検査でも、かなり細かく男性の妊娠能力の評価ができます。

精液検査の正常値 
※WHOマニュアル(第5版)により

検査項目 下限値
精液量 1.5ml以上
精子濃度 1500万/ml以上
総精子数 3900万/射精以上
前進運動率 32%以上
総運動率 40%以上
正常精子形態率(厳密な検査法で) 4%以上
白血球数 100万/ml未満

※上記表に記載している下限値を満たしていない症例は、20%弱あると言われています。その場合は、自然妊娠の可能性がかなり低いと推測されます。
※検査は複数回受けていただくことを推奨します。
※自宅での採精でも、約20~30度の温度に精液を保存でき、かつ2時間以内に精液を当クリニックに持参していただくことで、院内採精に近い精度になると言われています。

禁欲期間と保温

ガイドラインでは、2日以上7日以内の禁欲を経てから射精を行っていただくことが望ましいとされています。しかし、当院ではまずは、禁欲期間を設けていない、自然に近い状態で出した精液でも問題ございません。むしろマスターベーションは、リラックスしている時の精液採取が望ましいと言われています。
当院では、自宅採取して保温し、当院までお持ちいただく方法で検査を行います(急ぎの方は院内で採精しても大丈夫です)。ただし当院へ提出するまでの間は、体温に近い温度を保つことができる環境で保管し、他の不純物が混ざらないよう密封容器に保存してください。また、診察時にはだいたいで構いませんので、「何時に射精を行ったのか」をお伝えください。

精液検査を受ける回数

結果はその日の体調や生活習慣などでかなり変動します。そのため、検査結果に異常が出た場合は、精液検査を複数回受けていただくことも可能です(複数回と言いましたが、だいたい二回検査を行うとかなり精度の高い結果を出すことができます)。二回目以降の精液検査を受けたい方はお気軽にご相談ください。

検査結果は丁寧に
分かりやすくお伝えします

患者様には、実際の精液検査結果の詳細を説明し、解説書と検査結果のデータ表をお渡しします。検査結果で分からないことがありましたら、お気軽にお聞きください。

検査では異常を見つけるのが
大事です!

検査は、精子の異常の有無を見つけることを目的としています。不妊症で悩む方々の中には、男性不妊症に気付かずに、延々と他の不妊治療を続けてしまう方がたくさんいらっしゃいます。そうなるとせっかくの治療費と時間が無駄になってしまいます。
精液検査で異常を探すことは、きちんとご自身に合った不妊治療を見つけられる第一歩になります。もし検査結果に問題が出ても、「これから解決していこう」と前向きに考えていきましょう。
*ただし当院は、精液検査だけでなく、あらゆる男性不妊症を治療の初期段階から発見することが、不妊治療の治療効率を高め、短期間に妊娠することにつながると考えています。このため、女性不妊症患者様のパートナー様である全男性に最初の段階で、男性不妊症を専門とする生殖医療専門医の診察をお願いしています。
詳しくは、同ビル内の泌尿器と男性不妊のクリニックのホームページをご覧ください。

ご自宅で採精していただく際の
注意点

当院での精液検査は
保険適応外になります

  • 容器はフタ付きのタイプを使ってください。素材はプラスチックのような、滑らかな素材のものを推奨します。
  • フタ付き容器を準備するのが難しい場合は、紙コップに入れてラップをしっかりとかけてお持ちください。
  • コンドームでの採取は避けてください。
  • 容器は洗って完全に乾かしてから、精液を入れてください。
  • 採取時間は来院前2~3時間以内に行ってください。難しい場合は事前にご相談ください。時間が経過すると、検査に異常が出てしまう可能性があります。
  • 一回射精して出した精液「全部」を容器にしまってください。
  • 採取を行った時間」を覚えていただきますようお願いいたします。
  • 基本的には禁欲期間を設ける必要はありません。なお、禁欲期間は精液の状態に影響を与える場合もあるため、必ず射精間隔を医師へお伝えください。
  • 普段どれくらいの頻度で射精を行っているのかも正確にお伝えください。精液検査を見る上で重要な情報です。
  • 精液は内ポケットなど、人肌の温度に触れられるところへしまってお持ちください。20~30度程度での保管温度でしたら、数時間くらいもちます。
  • 冷蔵庫や真夏の車内での保管など、極端に冷たいまたは暑い環境下に精液を保管しないでください。
  • 精液はこぼさずにお持ちいただくのがベストです。もしこぼれてしまった場合は、残りの分だけをお持ちください。ただし場合により、再検査をお願いする場合がございます。
  • 検査は複数回受けていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。

精子不動化抗体
(抗精子抗体)

「精子不動化抗体」とは、女性の不妊症検査で行われる検査です。不妊症で悩む女性の中でこの「精子不動化抗体」を多く持つ方には、精子に対する抗体ができることによって、精子の頸管粘液通過性や精子の卵子への受精能力の低下などが起きてしまう方がいらっしゃいます。抗精子抗体の反応性が高い女性の場合は、体外受精(顕微授精を含む)といった生殖補助医療を選択して頂くこともあります。
この抗精子抗体は女性だけではなく、男性にも存在します。原因不明不妊症の3%程度にみられると言われています。男性の精子不動化抗体の多くは、閉塞性無精子症の発症や、精路(精巣や精巣上体など)の炎症が起きた方に認められます。
血液検査と精子不動化試験(SIT:Sperm Immobilization Test)を行いその反応性で検査結果を出します。
本来、男性には血液と精子が直接触れ合わないために「血液精巣関門」という障壁があります。しかし、何らかの炎症や外傷などでこの障壁が破綻を起こすと、精子に対する自己抗体が形成されます。
男性の精子不動化抗体が中程度の場合は、自然妊娠率の低下を招くため、人工授精または体外受精が必要です。また精子不動化抗体の量が高値である場合は、顕微授精を選択していくことになります。段階に応じた妊娠方法の選択が求められますので、適切な検査と治療を行い、妊娠へとつなげる必要があります。

ART(生殖補助医療)の
介入について

精液検査の結果によっては、お勧めさせて頂く治療法が変わります。特に体外受精や顕微授精など、ART(生殖補助医療)を検討されている患者様の場合、「いつから始めればいいの?」と悩む方も多いかと思います。
精子の状態と、それに合わせて行う治療法は、以下の通りです。

精子濃度 1000~1500万/ml程度の場合で、かつ、ある程度の精子運動率保たれている場合 自然妊娠、タイミング法、人工授精の補助
精子濃度 500~1000万/ml程度である程度の精子運動率が保たれている場合 体外受精の補助、人工授精の可能性もある
精子濃度 500万/ml以下の場合 顕微授精が推奨されることが多い
精子濃度に関わらず、精子運動率が非常に悪い場合 体外受精や顕微授精の補助が必要なケースが多い
運動精子がほぼいない場合 少しでも良好形態の精子を用いた顕微授精、時には精巣内の精子採取での顕微授精が望ましい場合もある

治療法は自然妊娠や体外受精、顕微授精など、様々あります。やみくもに成功率の低い治療法を行うのはお金も時間も浪費しますし、先の見えない不妊治療は精神的・肉体的にもとても辛いことです。
加えて、治療法を選択するにあたり、女性側の年齢や既往歴、経済的事情など、様々な要素にも考慮して決める必要があります。お二人の価値観やご希望も大切な基準です。納得いくまで話し合って決めていくことをお勧めいたします。

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