着床前検査

着床前診断
(Preimplantation Genetic Test: PGT)とは

体外受精で得られた受精卵(胚)を移植する前に、受精卵の染色体や遺伝子を調べることを着床前診断(Preimplantation Genetic Test: PGT)といい、妊娠率の向上や流産率の低下が期待できます。

当院は開院間もないため、現在PGTの認定施設ではありませんが、PGTの重要性は深く認識しており、なるべく早期に体制を構築し当院でもPGTを実施したいと考えております。認定されるまでの間、当院は生殖と遺伝専門のスタッフが在籍しているため、PGTの情報提供のみ実施致します。早期にPGTの実施を希望される患者様は認定施設への紹介を行います。

PGT について

PGTは大きくわけて3つあります。

・PGT-A(着床前胚染色体異数性検査: Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)
・PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査:Preimplantation Genetic Testing for Structural Rearrangement)
・PGT-M(着床前胚単一遺伝子検査:Preimplantation Genetic Testing for Monogenic single gene defects)

PGT-A・PGT-SR

日本では、日本産科婦人科学会倫理委員会の主導でPGT-A/SRの臨床研究が行われていましたが、2022年1月、日本産科婦人科学会の着床前診断に関する見解/ 細則が改訂され不妊治療や不育症治療の一環として実施することが認められました。

PGT-A
(着床前染色体異数性検査: Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)

PGT-Aとは、受精卵の染色体数や構造に異常がないかを調べる検査です。染色体異常のある受精卵は、着床しない、もしくは着床しても流産や死産が起きやすいとされます。
日本産科婦人科学会主導によるPGT-Aの有用性に関する臨床研究では、反復ART不成功例と反復流産例において、胚移植当たりの妊娠率おより生児獲得率が上がり、臨床妊娠後の流産率が下がる傾向が認められました。現在は、さらに大規模なデータでの研究が行われています。

PGT-Aの対象者

 反復流産経験のある不妊症、不育症患者

これまでの妊娠で臨床的流産を2回以上反復している方。なお、反復について連続で ある必要はありません。2回以上の流産の既往があれば対象となります。
なお、上記を満たすすべての方がPGT-Aの対象となるわけではないため、医師までご確認ください。
(例)妊娠するのに問題となる子宮奇形(中隔子宮など)と診断されている方、抗リン脂質抗体症候群と診断された方、重篤な合併症がある方は対象とはなりません。

反復ART不成功の不妊症患者

これまでに体外受精を受けていて、臨床的妊娠をしなかった方。反復について連続である必要はありません。2回以上の既往があれば対象となります。

PGT-A 実施可能施設

日本産科婦人科学会より施設認定を受けた施設のみで実施可能です。

PGT-A のメリットとデメリット

メリット
移植前に受精卵の染色体数や構造を調べることにより、染色体異常が見られた場合にその受精卵を移植しないことで、流産のリスクを減らすことができます。染色体数が正常な受精卵を移植するため、移植あたりの妊娠率や出生率の向上、初回妊娠までの時間の短縮が期待できます。
デメリット
検査のために、受精卵の一部の細胞を採取すること(胚生検)は受精卵に影響をもたらす可能性があります。
また、検査精度が100%ではないため、疑陽性(本当は正常胚であるが、誤って染色体異常と判定される)となり、本来であれば移植され妊娠に至ったかもしれない受精卵が移植に用いられない場合もあります。一方で、実際には染色体異常がある受精卵が正常胚と判定され移植されてしまうことで、その後流産や死産などに至る可能性もあります。

PGT-SR
(着床前染色体構造異常検査:Preimplantation Genetic Testing for Structural Rearrangement)

PGT-SRとは、受精卵の染色体数や構造に異常がないかを調べる検査です。不育症の1つに夫婦いずれかが染色体構造異常(均衡型染色体転座など)の保因者である場合があり、この夫婦は流産を繰り返す場合があります。PGT-SRで染色体異常のない受精卵を移植することによる流産率の減少を目的とします。

PGT-SR の対象者

夫婦いずれかの染色体構造異常(均衡型染色体転座など)が確認されている不育症(もしくは不妊症)の夫婦です。ただし、妊娠既往や流死産既往の有無は問いません。
なお、上記を満たす方のすべてがPGT-SRの対象となるわけではないため、医師までご相談ください。

PGT-SR実施可能施設

日本産科婦人科学会より施設認定を受けた施設のみで実施可能です

PGT-M
(着床前単一遺伝子検査:Preimplantation Genetic Testing for Monogenic single gene defects)

PGT-Mとは、重篤な遺伝性疾患を対象として、受精卵(胚)の遺伝子変異の有無を診断することを目的としています。
改定された見解/細則では「重篤性」の定義が変更され「原則、成人に達する以前に日常生活を強く損なう症状が出現したり、生存が危ぶまれる状況になる疾患で、現時点でそれを回避するために有効な治療法がないか、あるいは高度かつ侵襲度の高い治療を行う必要のある状態」としています。

実施までの流れ

実施するには、検査の適応について日本産科婦人科学会委員会で患者様ごとに審査され承認を受けた後に、実施施設の倫理委員会の最終承認を得る必要があります。

PGT-M実施可能施設

日本産科婦人科学会より重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査に関する施設認定を受けた施設のみで実施可能です。

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