クラミジア感染症について

クラミジアとは

クラミジアは種類がたくさんありますが、性感染症を引き起こす種類は「クラミジア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)」という病原菌だけです。
クラミジアは他の細菌と異なり、生きた細胞内に入り込んでは細胞質内で分裂増殖を行う特徴を持っています。増殖したクラミジアは細胞を破壊し、細胞外へと拡散してから、さらに他の細胞へ侵入して感染拡大を引き起こしていきます。

感染経路

主に性行為で感染し、プールや大衆浴場、トイレなどが感染経路になるケースはありません。感染者との粘膜接触や、分泌物を介して感染します。
クラミジア感染者と性交渉を行った場合、特に女性の方が感染率は高く、50%以上の確率で感染するとされています。
性器だけではなく、男性の場合は尿道、また男女問わず咽頭にも感染します。また、クラミジアの感染者は、HIV(エイズウイルス)への感染リスクが3~5倍に増加するため、早急な治療が重要です。
なお、潜伏期間は1~3週間程度で、潜伏期間中でも性行為によって感染を引き起こします。しかし、この段階で抗体検査を行っても陽性反応は現れないため、要注意です。

そのため、子宮卵管造影検査を受ける方には、直近のクラミジア感染の可能性も考えて、予防的に抗生剤を内服して頂いております。

日本での感染者割合

HPV(ヒトパピローマウイルス)を除いて、国内の性感染症の中ではクラミジア感染者が一番多いと報告されています。
クラミジア感染者は10年ほど前から急に増えており、性交経験のある女性(20代前半)の5~10人に1人はクラミジアに感染していることが予測されています。男女ともに成人のクラミジアの保有率は3~5%程度と言われていることから、決して珍しい感染症とは言えません。
国内での感染者数は100万人以上と言われ、特に10代後半~20代の感染者が多い傾向にあります。

クラミジアの症状

男性の症状

精巣上体炎

放置すると炎症が進行することで発症します。精巣上体(副睾丸)の腫れや発熱、痛みが現れます。

尿道炎

1~2週間の潜伏期を経た後に、軽い排尿痛やかゆみ、透明な分泌物または粘り気のある膿が出るなどの症状が起きます。

女性の症状

女性の場合は、進行すると、子宮付属器炎や骨盤内炎症性疾患などを発症します。しかし、自覚症状に乏しく、卵管障害・卵管性不妊症が分かってから診断されるケースも少なくありません。そのため、女性の場合は男性よりも症状が軽度ですが、合併症・後遺症リスクが比較的高めです。自覚しやすい症状は主に、おりものの増加や不正出血、下腹部痛、性交痛などです。

子宮頸管炎

子宮頸管炎にかかった約半数の方が、無症状だと言われています。
しかし無症状だからと放置してしまうと、将来、卵管炎や腹腔内感染へ進展する恐れがあります。特に分泌物検査で診断された方は、無症状でも早急に治療を行うべきです。

肝周囲炎

骨盤内から上腹部までに炎症が起きると、肝臓周囲に炎症が生じます(Fitz-Hugh-Curtis Syndrome)。
肝周囲炎を発症すると下腹部痛と右上腹部痛が起きます。特に発症したばかりの症状は「激しい上腹部痛」で、内科や外科など、他科への受診で気付く方も多いです。
ただし、他科では原因がクラミジア感染によるものだと気付かれにくいため、診断・治療が遅れて進行してしまう方も少なくありません。

子宮付属器炎

クラミジアが子宮頚部から卵管へ侵入した場合でも、自覚症状がなかなか現れず、発見が遅れる傾向が強いです。
パートナーに感染の疑いがある場合や、おりものの増量、不正出血、下腹部痛、性交痛などの症状がみられる場合、または触診で感染部位の圧痛(押すと痛みが生じること)などがみられた場合は、分泌物検査を行います。
クラミジアに初めて感染した場合ですと、卵管への障害も修復できるため、卵管障害につながるケースは少ない傾向にあります。ただし、十分な治療を受けなかったり、パートナーの治療を放置したりした場合は、反復感染のリスクが高まります。
卵管炎が慢性的に継続すると、卵管粘膜ヒダ構造が欠如したり、卵管分泌細胞が扁平化したりします。特に卵管上皮下まで炎症が広がると、卵管が線維化を起こし、卵管内腔が狭くなったり、卵管蠕動運動の障害が起きたりします。ここまで進行すると自然回復は不可能になり、卵・胚の輸送能障害が起きて子宮外妊娠や卵管性不妊へつながります。

骨盤腹膜炎

反復感染で炎症が骨盤内まで広がると、骨盤腹膜炎を発症します。
主な症状は強い下腹痛や性交痛、発熱などで、重症な方ですと救急外来を受診しなければなりません。内診時で子宮を少し動かしただけでも激痛を生じた場合、骨盤腹膜炎の確定診断を速やかに下します(骨盤腹膜炎の原因がクラミジアだと分かるには、多少時間がかかります)。
ここまで炎症が広がると、卵管采周囲癒着や骨盤内の癒着の併発が起き、卵のピックアップ機能の障害も生じます。卵管采が完全に閉塞したら、卵管留膿腫、卵管留水腫などをきたすため、手術する必要があります。ここまでの症状があった場合は、自然妊娠がかなり難しくなります。

咽頭感染

オーラルセックスなどの性行為を通して、咽頭にクラミジアが感染するケースもあります。近年は性行為に関する情報が気軽に入手できるようになり、オーラルセックスが一般的になったことから、咽頭の感染が増加傾向にあります。
咽頭に感染した場合、多くは自覚症状に乏しいのですが、性器にクラミジアが検出されたが無症状を訴える女性の10~20%は、咽頭からもクラミジアが検出されたと報告されています。また、咽頭の場合は、性器に感染した場合よりも治療に時間を要します。
特に慢性の扁桃炎もしくは咽頭炎で、かつセフェム系抗菌薬が効かない場合は、クラミジア感染が疑われます。

検査方法

女性のクラミジア感染症の診断方法は、以下の方法で行います。

分離同定法

病原微生物を直接検出する方法です。ただし、クラミジアを分離・培養するには特別な技術と設備、ある程度の時間が必要なので、検出感度も高くありません。

核酸増幅法

近年では、培養を行わずにクラミジア抗原が検出できるDNA プローブ法やPCR法が普及されています。これらの検査は非常に検出感度が高いため、腟分泌物の自己採取による検査でも正確な結果を出すことが可能です。ただし、最近の論文では、外陰部や腟内の検体採取のほうが検出率は高いと指摘されています。そのため、自己採取型の検査よりもクリニックでの検査の方を推奨します。検査時の痛みはないので、ご安心ください。

治療法

クラミジア・トラコマティスの増殖サイクルは2~3日間です。一般的なクラミジア感染症の治療では、マクロライド系抗菌薬やキノロン系抗菌薬のうち抗菌力の高い薬剤、またはテトラサイクリン系抗菌薬を投与します。
感染症の治療につきましては、反復感染を防ぐため、お二方一緒に行いましょう。

経口薬

薬名

服用回数

備考

アジスロマイシン1,000mg

単回投与((内服は1回だけ)

妊婦されている方も内服可能です

クラリスロマイシン200mg

1日2回、7日間

ミノサイクリン 100mg

1日2回、7日間

 

レボフロキサシ100mg

1日3回、7日間

 

注射薬

薬名

投与回数

ミノサイクリン100mg
※症状が極めて激しい状態のみに投与します。

1日2回、点滴投与3~5日間

治癒判定

原則投薬を行ってから2週間以上経過した後に、核酸増幅法(PCR法、TMA法、SDA法)を用いて、きちんと治癒できているかを確認します。しかし、投薬が終わってから3週間以内に検査を行った場合、死んだクラミジア菌によって偽陽性が出る可能性もあるため、完治の判定は慎重に行います。血清抗体価(IgG、IgA)は、既往の感染や治療後も陽性が持続する場合があるため、治療判定になりません。

不妊症との関連

クラミジア感染症は不妊症の原因の一つです。先述したように、女性はクラミジアに感染しても自覚症状に乏しいことも多く、知らず知らずのうちに感染が広まっている恐れもあります。
子宮卵管造影検査で卵管狭窄や閉塞などの異常が確認されなかった場合でも、長期間の感染拡大でダメージを受けた卵管は、排卵後に腹腔内に排出された卵子を取りこめなくなるピックアップ障害を起こしてしまいます。これが、不妊症へとつながります。ここまで進行した場合は、体外受精による妊娠が必要となります。とはいえ、卵管留水腫が生じた場合は、体外受精による妊娠率が大幅に低下してしまいます。そのため、早期発見し、異常な卵管部分の手術を行うことが大事な場合があります。

心当たりのある方はぜひ受診を

クラミジア感染は卵管通過障害から不妊症の原因となるため、妊娠を希望される方にクラミジア感染症の検査を推奨いたします。心当たりがありましたら、お気軽にご相談ください。

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