着床と
子宮内膜着床能(ERA)検査
子宮内膜着床能(ERA :Endometrial Receptivity Analysis)検査とは、胚移植の時期と着床のタイミングが合っているか否かを評価する目的で開発された検査方法です。子宮内膜が受精卵を受け入れる時期「着床の窓」は決まっているのですが、この「着床の窓」のタイミングが患者様により通常の場合と異なっていないのかを検査するものです。
「着床の窓」は、(排卵日を0日として)排卵後5日~9日前後(分泌中期の月経周期19~22日頃)に開かれると想定されています。そして、正常な受精卵(胚)でも、この「着床の窓」の時期を外れて子宮内膜に付着した場合、妊娠に至らなくなったり、極めて初期の流産になってしまったりする可能性が上がります。実際、原因不明の反復着床不全の患者様にERA検査を行った場合の約30%が、「着床の窓」のタイミングがずれていたと報告されています。そこで、患者様それぞれの子宮内膜の着床能のタイミングを見つけるためにERA検査を行います。
なお、着床が成立するには「着床の窓」を開くことだけではなく、子宮内膜の接着因子や、胚シグナル、ナチュラルキラー細胞をはじめとする、免疫細胞なども関係しています。
子宮内膜日付診との違い
従来の子宮内膜日付診は、排卵後5~6日目で子宮内膜を一部採取し、顕微鏡下で観察した子宮内膜組織の特性から、排卵後の日数を推定する検査でした。しかし、この方法では、検査を行う人によって誤差が発生するため、再現性が低いという問題点がありました。
これに対してERA検査では、実際に胚移植を行う周期とほぼ同一条件下で子宮内膜にある、着床に関係する遺伝子を解析することができるため、再現性が高く、患者様個人の着床可能時期が推定できます。
ERA検査の適応
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反復着床不全: 2回以上良好胚を移植しているにも関わらず着床不全となる症例
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高年齢で移植をできる胚の少ない症例
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子宮内膜の厚さが7.0mm以上あり、子宮側に特に問題を認めないにも関わらず着床不全となる症例
ERA検査における留意点
- あくまで「最適な移植時期」を調べる検査のため、必ずしも妊娠・着床を保証できる検査ではありません
- ERA検査を実施する周期には、胚移植を実施することはできません
- 検査結果が出るまで、3~4週間程度お時間を頂戴します
ERA検査の流れ
検査の行われる周期は「自然排卵周期」と「ホルモン補充周期」の二つあります。当院のERA検査は、再現性という観点から、主に「ホルモン補充周期」で行っております。使用する薬剤は、凍結融解胚移植を行うホルモン補充周期で実際に使用するものと同じものを用います。
※ERA検査周期では、実際の胚移植は行いません。
月経1~3日目に来院していただき、子宮内膜を厚くするためのエストロゲン製剤を使用開始します
※前周期のホルモン剤の使用などによっては、医師の指示で変更する場合もございます。
月経12~16日目頃になりましたら、子宮内膜の厚さを調べます。その後、プロゲステロン(黄体ホルモン)製剤の投与を開始します。
プロゲステロン製剤の使用開始日から5日目(投与開始日を0日目と計算しております)に、子宮内膜組織を採取します。
ERA検査結果について
ERA検査では、子宮内膜の生検時点が「受容期(Recepptive)」もしくは「非受容期(Non-Receptive)」か、遺伝子発現プロファイルから判断します。
子宮内膜を採取した時期の結果が「受容期」だった場合、「着床の窓」には問題がないと分かります。そのため、良質な受精卵(胚)を引き続きこの時期に、かつ同じ条件下で移植すると妊娠に至る可能性が高まります。
これに対して、「非受容期」の結果が出た場合は、再検査を行います(ERA検査は検体採取の難易度が高いため、検体不良で再検査になることも珍しくありません)。1回目、2回目の検査結果を総合評価し、最適な移植時期を特定して胚移植を実施した結果、妊娠率が25%向上したと報告されています。
また、他の着床不全の原因を調べる検査である、EMMA検査(子宮内マイクロバイオーム検査=子宮内の常在菌を調べ、その中の乳酸菌の割合を調べる)とALICE検査(感染性慢性子宮内膜炎=子宮内に炎症性の感染症に関連する菌がいないかどうかを調べる)の2つの検査も、ERA検査と同時に行うことが可能です。
ERA検査の費用
当院ですでに採卵を行った方 |
円 |
上記以外の方 |
円 |
※薬剤料、超音波検査・ホルモン検査の費用は別途必要になります。