超音波検査と各種検査

超音波検査

物体に当てると反射する超音波の性質を活用して、卵巣や子宮の様子をモニターで診る検査方法です。 超音波検査を行うことで、子宮・卵巣の状態や、卵胞の発育状態、卵巣腫瘍・子宮筋腫・子宮内膜ポリープの有無、子宮内膜の状態など、様々なことが確認できます。当院では、高性能経腟超音波装置であるGE社のVoluson P8を使用しています。
子宮筋腫においては、超音波検査は子宮筋腫の有無や子宮内膜の厚さ、子宮筋腫の場所や大きさなどを判別することのできる重要な検査となります。また、卵巣腫瘍においては、治療が必要なケースもありますが、中には経過観察でも問題がない腫瘍もあります。
不妊治療において、卵胞の発育状態を確認することは大事なことで、卵胞の発育を予測したり採卵のタイミングを検討する上でも超音波検査は重要です。また、子宮の健康状態や子宮筋腫・子宮内膜ポリープなどの子宮疾患を確認することも極めて重要です。症状によっては、妊娠前に治療を行う場合もあります。

子宮筋腫

クラミジア抗体検査・
抗原検査(核酸同定)

クラミジア抗体検査では、採血にてIgG・IgA(クラミジア抗体)の有無を確認します。これに対して、クラミジア抗原(核酸同定)検査は、クラミジアに感染しているかどうかを確認する検査です。
クラミジア抗体検査(IgG・IgA)は、クラミジア感染の有無を確認するだけではなく、腹腔内の癒着や卵管の病変の有無を予測する点においても有効な検査方法です。IgGが陽性だった場合、卵管の病変が確認される可能性は60%程度と、半分以上の確率になります。特に「過去一カ月以上前にクラミジア感染を起こしたが、現在は回復している方」の場合、IgGの陽性反応が出る傾向にあり、その場合でも治療対象になります。
一方、陰性だった場は卵管病変を認められない可能性が80~90%になっております。妊娠中にクラミジア感染が起きると、産道感染(新生児肺炎・結膜炎など)や流早産のリスクがあるため、クラミジア抗体検査・抗原検査を受けることが重要となります。

クラミジア感染症

風疹抗体

風疹の抗体を調べる検査で、不妊治療を始める前に行います。検査結果が陰性だった場合は、風疹に感染してしまう可能性が高くなるため、ワクチン接種を済ませてから不妊治療を開始されることを推奨いたします。
風疹の症状としては、鼻水や咳、発熱、紅色斑丘疹、リンパの腫れなどが現れます。妊娠初期の段階で風疹に罹ると、胎児も風疹に罹ってしまい、先天性心疾患や白内障などの障害(先天性風疹症候群:CRS)を引き起こしやすくなります。風疹は感染力が強いので、ご家族・パートナーの方も一緒に、妊娠前に風疹ワクチン接種を済ませておくことを推奨します。風疹ワクチン接種を当院で行うことは可能です。
なお、風疹は過去に感染したことがあり免疫をお持ちお方でも、免疫力が低下することで再度かかる場合もあります。風疹抗体検査により、現在の免疫を調べることで、風疹に対する免疫がない、あるいは免疫力が低いという方はワクチン接種を受けることを推奨しております。また、ワクチン接種においては、ワクチンのウイルスが2~3週間程度、長い方で1カ月程度残るとされています。そのため、日本ではワクチン接種後、二カ月ほど妊娠を避けることを推奨しております。

甲状腺機能検査

「甲状腺(首の下にある蝶のような形をした臓器)」の機能を調べ、甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺から分泌されている甲状腺ホルモン(FT3・FT4)の数値を測る血液検査です。
甲状腺ホルモンが低下している場合は、橋本病などの甲状腺機能低下症が疑われ、亢進している場合はバセドウ病などの甲状腺機能亢進症が疑われます。特に、甲状腺機能低下症にかかっている方は正常な方と比べ、流産・早産の可能性がわずかに高い傾向があります。甲状腺機能低下症の症状は主に、むくみや生理不順、脱力感など、目立たない症状が多いため、自覚されずに日常生活を送っている方は決して少なくありません。
なお、甲状腺刺激ホルモンと甲状腺ホルモンの数値が基準値から外れた場合は、甲状腺の異常が疑われるため、甲状腺ホルモンに詳しい専門医へ紹介いたします。

抗精子抗体

精子の運動を妨げる「抗精子抗体(anti-sperm antibody:ASA)」がないかを調べる血液検査です。もともと、人間には自分以外の異物を排除する免疫機能を持っています。女性にとって精子は異物ですが、特別な働きによって精子を体内へ迎え入れることで妊娠へ至ります。しかし、何らかの理由で抗体ができ、精子を排除するように働いてしまうことがあります。不妊症の女性の約3%が、この抗精子抗体による不妊だと報告されており、腟や卵管内で抗精子抗体が働くことで精子を排除してしまっていると考えられています。また、男性の場合でも、精巣や精巣上体の炎症・外傷によって精子と血液が混ざることで、抗体ができるケースもあります。
しかし、結果が陽性だった場合でも、抗体量の高ささに応じて治療法を検討することができます。抗体が弱い場合には、タイミング法などの人工授精を検討し、ある程度抗体量が高く自然妊娠が難しい場合には体外受精や顕微授精などを選択します。患者様一人ひとりの状態に応じた妊娠の可能性を探っていきますので、どうぞお気軽にご相談ください。

インスリン抵抗性試験

インスリン抵抗性の程度を調べる血液検査です。インスリンとは、血糖を下げる働きを持つホルモンの一種で、そのインスリンの作用が効きにくくなる状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。インスリン抵抗性は、糖尿病や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、肥満と関係しており、これらを発症すると排卵障害が起きやすくなるため、不妊症となります。
通常の場合、インスリンの働きで血糖値が低下する動きが見られますが、インスリン抵抗性があると、血糖値の低下速度が通常より遅くなります。血糖コントロールが難しい状態で妊娠すると、流産や胎児の先天性異常が起きやすくなるため、妊娠前から血糖値の動きを確認することはとても重要です。
インスリン抵抗性の評価には、空腹時血清インスリン値を測定し、15µU/ml以上ならその可能性を疑います。一般には空腹時血糖値×空腹時血漿インスリン値÷405で表されるHOMA指数(homeostasis model assessment)がよく用いられています。

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